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――次の日の朝、自転車のベルの音が聞こえて目を覚ます。
今日は、あの音が聞こえる前に、学校へ行こうと思ったのに。
こんな状況でも、睡魔に負けてしまうあたしって……。
恋が実るはずがないのも、頷ける。
窓は開けずに、急いで支度を始める。
髪は結ばず、下ろしたままで。
「ご、ごめん……」
玄関から出てきたあたしを見た晴馬は、目を丸くした。
「…やけに早いと思ったら…髪、下ろしたんだ」
――だってもう、気付いたから。
「うん」
どんなに晴馬の理想に近づこうとしても、無駄なことを。
自転車の荷台に腰を下ろし、背中を合わせた。
ひそかに感じる、晴馬の息遣いと鼓動。
あたしのも、聞こえてるのかな?
けどあなたはきっと、そんなもの興味ないだろうね。
不意に信号で止まり、体が揺れる。
「……今日、何で早いの?」
またもや不意を突かれる。
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