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「何でそう思うの?」
ベッドのシーツを整えながら、聞く先生。
「あのね、あたし…恥ずかしいんだけど、少しは望みあるんじゃないかって、期待してたんだ」
手遊びをしながら、言った。
先生は黙って耳を澄ましている。
「だけどね、アイツ、あたしの気持ちに気付いてたの。
それで駆け引きしたりして、あたしの気持ちで楽しんでたんだよ」
泣きたい衝動に駆られる。
だけどそれを隠すように、そっぽを向いて笑った。
「まぁ~…沖田くんはモテそうだからね。
女の子の気持ちには、敏感だと思うよ。
しかもそれが尚更、幼なじみだったらね」
直球な先生の言葉が、胸に突き刺さる。
「だけど、ホントに沖田くんはそんな子なの?
嘉奈ちゃんが好きになった沖田くんは、人の気持ちを弄ぶような人?」
その質問に、今まで晴馬と過ごした日々を思い出す。
屈託のない笑顔の晴馬。
少し心配性な晴馬。
たまに意地悪を言う晴馬。
いつも優しい晴馬。
――全部、本物だ。
「違うでしょ?」
静かに頷く。
キラキラと光った、今までの時間は今も相変わらずキラキラ輝いている。
その日々が、全部偽物だったなんて、思えないよ…。
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