可愛いあの子

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さっき決めた心が、また揺らいでしまう。 信じようと決めたのに。 弄ばれてるんじゃないか、って、悪い考えが、心臓を鷲掴みする。 「嘉奈?」 ごとちんの視線に気が付き、あたしは意識を戻す。 「あぁー…ちょっとぼーっとしてたっ!ごめんね」 と謝ると、ごとちんではない、あたしを呼ぶ声が聞こえた。 「嘉奈」 反射的に肩がビクッと痙攣する。 晴馬の声、笑顔、全部が体に染み付いてしまっている。 「朝から保健室って、やっぱ何かあったんじゃん」 目を細めて、少し怒り気味な晴馬。 ……あんな些細なことで、簡単に揺らいでしまう。 “信じよう”とする気持ちが、今は霧のように、実体がない。 「大丈夫、ちょっと頭痛かっただけだから」 「ふーん…」 晴馬は納得がいかない様子。 そんなとき、一番見たくない場面が、再び訪れた。 「――沖田くん、はいっ!ノート貸したげる」 晴馬に差し出されたノート。 それがあたしのものじゃないことと、晴馬の表情。 「サンキュ」 あたしの“信じる気持ち”を壊すのには、充分だった。
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