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どんよりと、今にも落ちてきそうな雲が、灰色の空を浮かぶ。
「おす」
「おはよー」
長い髪を弾ませる。
あたしの、晴馬への恋心が何処だか分からなくなった頃から、何も変化はなかった。
しいて言えば、あたしは髪を結ばなくなったこと。
あとひとつ、変わったことがある。
「髪、結ばねーの?」
毎日そう聞いては、あたしの髪に触れるようになった。
「うん、めんどくさいからっ」
清々しいほどの返答に、晴馬は曖昧に頷くだけ。
「今日は結んだほうがよかったんじゃない?」
その言葉に、あたしは疑問が浮上した。
「雨降るから」
「なんで?」と聞く前に、晴馬は答えてくれた。
確かに、今日は雨が降る。
けど、そうだとしても――もう二度と、あたしは髪を結ばない。
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