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「あー、ビチャビチャ」
自転車を止めたあと、あたしたちは急いで昇降口に雨宿りする。
晴馬はびしょ濡れ。
肌にシャツがへばり付き、搾ったら水が出てくるんじゃないかってぐらい。
ちなみにあたしは、持ってきた自分の傘であまり濡れていない。
「入れてあげるって何回も言ったのに…」
唇を尖らせて、憎まれ口を叩く。
「だって濡れんじゃん、髪」
あたしの髪をサラリと軽く触り、微笑む。
左胸の奥が、大きく高鳴り、揺らいだ。
「つかお前も女なんだから、風邪引くだろ。
俺は男だから別にいーけど」
「……ウソ」
あたしの一言に、晴馬は怪訝そうな顔つきになる。
「何ソレ、喧嘩売ってる?」
「………違う、そうじゃなくて」
――ウソ。
あたしを、今、女扱いしてくれた…?
頭の中がこんがらがる。
だって今まで、幼なじみ扱いだったのに。
それも計算?
喜ぶあたしを見て、また笑ってるの?
「……なに、急に黙って。怖いんだけど」
あたしの顔を覗き込む晴馬。
それであたしははっと気が付き、顔を背けた。
晴馬の気持ちが読めない。
何年も一緒にいるのに、晴馬の意図が全く分からない…。
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