行方知らずの恋心

5/16
前へ
/410ページ
次へ
「晴馬って……分かんないよね」 「は?急になに?」 この反応から、計算ではないことがわかる。 じゃあ、素で思ってくれてたのかな。 あたしが、“女”だということ。 「…遅刻するけど、どーする?」 能天気な質問をする晴馬。 「行くに決まってんじゃん!」 大急ぎで教室へ走る。 急いで階段を駆け上がった結果、遅刻だったけど。 その間には思わぬ収穫があった。 晴馬は、あたしを女として見てくれてた。 なら、まだあたしに望みはある? ――もうちょっと。もうちょっとだけ。 頑張ってみようかな。 明日からは、髪を結んでみよう。 こんな些細なことで、固く決心していた心は、呆気なく崩れ落ちる。 こんな単純だから、直ぐにあたしは茨の道を歩いてしまう。 自ら自分を傷つける道を、歩いてしまうんだよね――。
/410ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加