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生徒が行き混じ合う下駄箱。
靴と上履きを入れ替えていると、
「おっはー」
聞き慣れた声が、あたしに降り掛かる。
「あ。おはよ、ごとちん」
声の主はごとちんこと、後藤梓(ゴトウアズサ)
名字が“後藤”だから、そこから取り、ごとちん。
「沖田もおはよ」
「おす」
晴馬は薄く笑う。
沖田とは、晴馬のことでもあり、名字でもある。
「相変わらず2人でチャリ通?
仲いいよねー、あんたら」
冷やかしを混ぜた笑みを、ニヤニヤと浮かばせるごとちん。
毎日言われてる言葉だし、どう返したらいいのかも、もう分かる。
「はは、“幼なじみ”なんだし、仲いいのは当たり前じゃない?」
開き直って、空笑い。
ごとちんはあたしの空笑いにも気付かず、笑う。
「そーそー。幼なじみだし、当たり前じゃん?」
……昨日も同じことを、言ってたよね。
一昨日も、一昨々日も。
そのたび、胸がズキッと、苦しいくらい痛く鳴る。
なんでかな。このやり取りは慣れてるはずなのに…。
この胸の痛みには、どうしても慣れない。
明日も、明後日も同じやり取りをして、またあたしは傷付く。
分かってるよ。分かってるのに。
どうしても、この“恋”から抜け出せないんだ。
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