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そこからはごとちんも会話に交えて、3人で教室に向かうことになった。
「後藤ー、宿題やってきた?
ホラ、数学の」
何気ない会話に、あたしは耳を澄ます。
「あー、うん。やってきましたとも。
……なに、また忘れたの?」
呆れて、晴馬を見る目を細めるごとちんに、晴馬は両手を合わせて頭を下げる。
「一生のお願い!俺に宿題見せて!」
その言葉に、あたしは大袈裟なくらい傷ついた。
「はぁー?……この前も「一生のお願いっ、梓ちゃん!」とか言ってたじゃん。
あんたの一生どんだけあんのよ」
「ホラ、大好きな沖田くんの頼みごとなんだからさ、
ここは「しょうがないなぁ~」が、普通じゃね?」
おちゃらけて言う晴馬。傷を隠してあたしは笑った。
「知らんわ、んなもん」
ドライなごとちんは、あっさり晴馬を見捨てた。
あたしは、罪悪感に苛まれているというのに。
「どした?嘉奈?」
ぼーっとしていたのか、ごとちんは心配しているのか、眉を寄せてあたしを覗き込んでいた。
あたしは意識をそれに戻し、あははっとまた笑う。
「いや、ごとちんイケメンだなぁと思って」
「でしょ?沖田よりイケメンのつもりだから」
「あ、俺今めちゃくちゃ傷ついたわ」
何が嘘で、何がホントなのか、分からない。
そんな晴馬が、あたしは好きなのだ。
誰にだって、分け隔てなく接する晴馬。
そんな晴馬が、あたしは好き…なのに。
そこが、あたしは一番キライなところ。
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