幼なじみの距離

8/9
前へ
/410ページ
次へ
そこからはごとちんも会話に交えて、3人で教室に向かうことになった。 「後藤ー、宿題やってきた? ホラ、数学の」 何気ない会話に、あたしは耳を澄ます。 「あー、うん。やってきましたとも。 ……なに、また忘れたの?」 呆れて、晴馬を見る目を細めるごとちんに、晴馬は両手を合わせて頭を下げる。 「一生のお願い!俺に宿題見せて!」 その言葉に、あたしは大袈裟なくらい傷ついた。 「はぁー?……この前も「一生のお願いっ、梓ちゃん!」とか言ってたじゃん。 あんたの一生どんだけあんのよ」 「ホラ、大好きな沖田くんの頼みごとなんだからさ、 ここは「しょうがないなぁ~」が、普通じゃね?」 おちゃらけて言う晴馬。傷を隠してあたしは笑った。 「知らんわ、んなもん」 ドライなごとちんは、あっさり晴馬を見捨てた。 あたしは、罪悪感に苛まれているというのに。 「どした?嘉奈?」 ぼーっとしていたのか、ごとちんは心配しているのか、眉を寄せてあたしを覗き込んでいた。 あたしは意識をそれに戻し、あははっとまた笑う。 「いや、ごとちんイケメンだなぁと思って」 「でしょ?沖田よりイケメンのつもりだから」 「あ、俺今めちゃくちゃ傷ついたわ」 何が嘘で、何がホントなのか、分からない。 そんな晴馬が、あたしは好きなのだ。 誰にだって、分け隔てなく接する晴馬。 そんな晴馬が、あたしは好き…なのに。 そこが、あたしは一番キライなところ。
/410ページ

最初のコメントを投稿しよう!

225人が本棚に入れています
本棚に追加