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「じゃー可愛いコにでも、宿題写させてもらお」
晴馬はいじけて口を尖らせて、言う。
いちいち、傷つくな、あたし。
「何でー?あたし可愛いじゃん」
冗談めかして、あたしは自分を指差し、言う。
晴馬は無表情のまま、
「おー可愛い可愛い」
棒読みであたしに言い返す。
「うわ、ムカつく」
――気付いて。
あたし、本当はあなたのこと…。
「はは、じゃー見せてよ」
その切り返しに、傷付いた胸がキュンと鳴る。
――気付かないで。
今は、まだこのままで。
近いけど、遠い。
もっと近寄りたい、と思うほど、遠くなる。
“幼なじみ”という壁は、分厚くて、大きい。
“幼なじみ”という距離は、長くて、道が複雑。
どうにしても、あたしと晴馬が恋人になることなんて、出来ない。
だから、あたしは思う。
あたしはあなたの背中に、恋が出来れば、それでいい。
そう、思っていたんだ。
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