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夜、薄暗い路地裏。
足音を殺して忍び寄る。
音もなく抜いたナイフを、《標的》の背中に突き立てる。
「なっ……!!ガハッ……貴様……くそ……」
程なくして何も言わなくなったソレからナイフを抜き、付いた血を拭きとる。
綺麗になったナイフは月の光を反射して俺の顔を照らした。
翌朝、市で賑わう町を進んでいると、ある店の中から声がかかる。
「よお、オーテンシアの兄ちゃん、昨日も派手にやらかしてんじゃねーの」
「なんのことだか」
「で、今日も彼女に花束かい?」
「あぁ、そうだな……今日はセントウレアの花で頼む」
「了解、ちょっとおまけしとくぜ~」
「わざわざすまないな」
「いいってことよ!」
セントウレア……またの名をヤグルマギク。
彼女の好きな青い花だ。
花束を片手に、紫陽花の咲く丘の屋敷を訪れる。
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