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たぶん、今日から高校生だ!ってうかれていたんだろうな。そうでなければ消しゴムなんか忘れるものか。
小学生じゃあるまいし。
しかし、1日中消しゴムがないのも不便だ。これは友達づくりもかねてお隣さんにはなしかけるというのもありかもしれないなと前向きに考えてみた。
「すみません、消しゴムをかしてくださ…」
何気なく右をむいて男子にはなしかけてみたがわたしはどうやらはなしかける相手を間違ったようだ。少しいけないものをみたような気がする。
彼はあたまにりんごをのっけていたのだ。
それにはわたしの常識を遥かに越えるものがあった。
有無を言わさずわたしの目線は振り返った彼の目ではなく振り返ったのに転がり落ちないりんごに向けられる。
「消しゴムならあるよ」
彼は気にかける様子もなく筆箱から消しゴムを1個…続いて2個3個と全部で7個の消しゴムをとりだした。
「どうしてそんなに持ってるの?」
わたしは至極あたりまえの質問を彼に投げ掛けたと思う。そして、なんとなくだがこのなかから1つを選ぶ権利は少なからずわたしにあるのではないかと感じた。
「授業中の暇潰しさ」
彼は楽しげに笑うと、7個の消しゴムを空中に放り投げてお手玉のように操りだした。
「どうぞ、どれでも好きなのとって」
宙を舞う消しゴムは目で追うのが難しいくらいに速い。わたしは狙いをさだめ、彼のほっぺたをたたく勢いで消しゴムを1個かりた。
6個になった消しゴムたちは一瞬リズムは崩したものの、また元通りにリズミカルに跳び跳ねる。
「今日が終わったらかえしてね。じゃないと明日の授業中が消しゴム1個分暇になっちゃうから」
へぇ、面白いヤツ。
先生がわたしたちを注意すると、彼は消しゴムを放り投げるのをやめ落ちてくる消しゴムを全部片手でキャッチした。
へぇ、すごいヤツ。
授業が終わったときにわたしは、教室をでていく彼のうしろ姿をみた。まだりんごをのっけている。
そういや、消しゴムで遊んでたときもりんごは転がることなく彼のあたまに座っていた。
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