5人が本棚に入れています
本棚に追加
ワシは昔、江戸幕府を開いた武将だった。
民の為、争いのない平和な世を創る為、ワシは大切な友の絆を自ら断ち切った。
…石田三成の。
おかげで三成は、ワシを殺す為だけの復讐の化身となった。
”関ヶ原の戦い”でワシはこの手で三成を殺した。
…そして、三成の命と引き換えに平和な世が訪れた。
三成の命と引き換えに。
平和な世・三成の命、両方とも取るなんて出来なかった。ワシは平和を選ぶ代わりに三成を不幸にした。不幸のどん底にに叩き落としてしまった。
何が絆だ……本当にひどい話だよ。
今のワシは転生し、ただの高校生になった。”徳川家康”でもない、ただの高校生に。
…昔の記憶を持っているだけの。
今のワシは変わった。いや、変えたんだ。
トレードマークの様に上げてた髪を止め、パーカーも黄色や山吹色ではなく、赤や青、黒などにした。
それに口調も少し変えた。
”ワシ”ではなく”俺”に。
元々、筋肉が付き易い体質だったが、ワザと付けないようにもした。
名前は勿論『徳川家康』何て名前じゃない、それは大丈夫。
名前はともかく、何故ここまで徹底的にやるのか、昔と同じ様にはしないのか?
しないよ。
これはワシのケジメだし、なにより
…それは全部『三成』の為。
記憶を持つ前は髪も上げてたし、パーカーだって黄色を好きこのんで着てたし口調も、口調も”ワシ”だった。
だが、16の誕生日、突然前世の記憶を思い出した。
その時は、平和な世を創った代わりに三成を殺したと言う残酷な過去と、容姿がほぼ昔の儘だということに絶望した。
これでは三成に気付かれてしまうと。
最初のコメントを投稿しよう!