幸せのために

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ワシは昔、江戸幕府を開いた武将だった。 民の為、争いのない平和な世を創る為、ワシは大切な友の絆を自ら断ち切った。 …石田三成の。 おかげで三成は、ワシを殺す為だけの復讐の化身となった。 ”関ヶ原の戦い”でワシはこの手で三成を殺した。 …そして、三成の命と引き換えに平和な世が訪れた。 三成の命と引き換えに。 平和な世・三成の命、両方とも取るなんて出来なかった。ワシは平和を選ぶ代わりに三成を不幸にした。不幸のどん底にに叩き落としてしまった。 何が絆だ……本当にひどい話だよ。 今のワシは転生し、ただの高校生になった。”徳川家康”でもない、ただの高校生に。 …昔の記憶を持っているだけの。 今のワシは変わった。いや、変えたんだ。 トレードマークの様に上げてた髪を止め、パーカーも黄色や山吹色ではなく、赤や青、黒などにした。 それに口調も少し変えた。 ”ワシ”ではなく”俺”に。 元々、筋肉が付き易い体質だったが、ワザと付けないようにもした。 名前は勿論『徳川家康』何て名前じゃない、それは大丈夫。 名前はともかく、何故ここまで徹底的にやるのか、昔と同じ様にはしないのか? しないよ。 これはワシのケジメだし、なにより …それは全部『三成』の為。 記憶を持つ前は髪も上げてたし、パーカーだって黄色を好きこのんで着てたし口調も、口調も”ワシ”だった。 だが、16の誕生日、突然前世の記憶を思い出した。 その時は、平和な世を創った代わりに三成を殺したと言う残酷な過去と、容姿がほぼ昔の儘だということに絶望した。 これでは三成に気付かれてしまうと。
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