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だが、皮肉な事に三成は近くにいる。
わしが通勤する駅にいるのだ。
もし、神がいるのなら何故ワシ達と引き離してくれなかったのだ…
朝、何時もの様に三成を見かける。
この苦しい思いを押し殺し、涙が出るのを我慢する。
ワシは三成に見つからない端の窓から三成を見る。
今の三成は、半兵衛殿や秀吉公、形部、毛利、真田幸村に囲まれてとても楽しそうに笑っている。
ワシは、三成に出会う資格も無ければ、触れる資格もない。
今度は三成を不幸になんてさせない。
今、三成を見ているワシはどんな顔で三成を見ているのだろう。
笑顔見れているのだろうか?
いや、きっと酷い顔をしているのたろうな…
ワシの周りにも、伊達政宗と長曽我部元親が転生してワシの周リにいる。友として。
昔の記憶は覚えていないが、引かれ合う運命なのか、政宗には真田、長曽我部には毛利といった、馴染みの深い者達がこうして近くに居るのだ。
昔の記憶もなく、皆、幸せそうに。
そう、それで良い。
あんな辛い過去なんて無い方が良い。
皆、笑ってこのまま一生を過ごしてくれ。
昔の辛い記憶なんて知ってるのはワシだけで良い。
「…。おぅ!」
ふと自分の名前を呼ばれ後ろを振り向くと、昔、長曽我部元親と呼ばれていた男と、伊達政宗と呼ばれていた男が立っていた。
「Hey!さっさと乗らねぇと電車行っちまうぜ!」
二人に急かされ電車の方にむく。
ワシは少しだけ三成にむき直し
「…サヨナラだ三成。」
小さく呟く。
出来るならまた、三成に触れたかった。
また、お前と話したかった。
お前の瞳にワシが映る事は二度とない、三成の記憶にワシが入ることは許されない。
これは昔、ワシがお前との絆を断ち切った為の罰なのだ。
三成、今度こそ幸せになれるよな?
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