1、助っ人

8/8
前へ
/53ページ
次へ
なにせ自分は生まれてこのかた、オカルティックな事柄にはまったく縁がない人生を送ってきた。 霊感ならぬ零感である。 人並みに興味がなくもないが、自ら進んで心霊スポットに行くほど物好きでもないし、正直よくわからない世界だ。 だからまず実体験できるものならしてみて、今後どうするかを冬樹と考えていく事にした。 「お兄ちゃ~ん」 車の傍らで思考にふける兄の耳に、妹・春日の間延びする声。 「どうした?」 車を駐車場にいれて、5分以上経っている。 その間、その場から一歩も動こうとしなかった人間が、活動的な人間に対して「どうした」もない。 春日は敷地入口付近の草むらを指さして、言った。 「猫がいっぱ~いよ~!」 脳天気な妹の黄色い歓喜に、兄は熱い車体に頭をぶつけた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加