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「……おいおい」
ドアは一度閉まり、せわしなくチェーンをはずす音がして、やっとのことで外に向かって開かれる。
「いらっしゃい!」
待ちかねたように飛び出して来たのは、懐かしい顔。
喜色満面の冬樹だった。
「遠いところをありがとう!」
「はいはいはいはい」
今にも抱きついてきそうな冬樹の肩を押して下がらせ、夏月はその胸に鞄を押しつけた。
「ちょっとは落ち着けよ、お前。今、ドアに体当たりしたろ?」
「え? あ……うん。ちょっと嬉しくて慌てちゃって、止まれなくて滑っちゃった」
えへ、と頬をかいて笑う23歳。
その昔、もやしっこだった少年は、現在ももやしっこだった。
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