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ピクニックができるように、というのであれば屋根つきのランチコーナーくらいあってもいいものを。
せめて今が春なら、タンポポや菜の花で心躍る黄色い海が見れたのにな~と思うと、なんだか色々もったいない人工野原だった
がさり、とバルコニーの横手の草むらが音をたてて揺れた。
「ん~?」
風の少ない午後である。
遅い反射神経で、そちらを振り向く春日。
結果的にはその遅い動作で、相手を驚かせずにすんだ。
春日はそれと目があったから。
バルコニーの柵の隙間から、白・黒・茶の三色顔。
「猫~」
目つきの鋭い野良猫だった。
その横から、黒猫、白猫、茶虎猫と、三匹の子猫がひょっこりと顔を出す。
子猫の1匹が春日をみて、にゃぁ、と小さく鳴いた。
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