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「あぁ、麦茶あるよ。中でゆっくり飲みなよ」
緊張していた相好をやわらかく崩し、冬樹は笑って室内を示す。
「ううん~、私が飲むんじゃないの~。猫~」
「猫?」
そ~、と答えて春日はバルコニーの横を振り返った。
「………あれ~?」
ほんの1分たらずの合間に、猫の親子は消えていた。
雑草の茂った草むらはそよとも動かず、そこに猫がいた軌跡など欠片もなかった。
「あれれ~?」
「うわ、やっぱ外は暑いな。で、どこに猫だって?」
窓に寄って顔だけ出した夏月が、顔をしかめて妹を見る。
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