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冬樹はこの春、やっとの事で一人立ちを果たし、3LDKの新築マンションに入居した。
1人暮らしに3LDKは広すぎるのだが、父方祖父の経営するこのマンションに是非にと言われ入れてもらったうえに、家賃の徴収もないらしい。
ジィさん、いくら孫でも成人男子相手に甘過ぎねぇか?
などと、来客用の駐車場にとめた車から降りつつ、夏月は思う。
幼い頃に何度か会ったことのある冬樹の祖父は、素肌に黒のレザーベストを羽織り、マフラーで【ゴッドファーザー】の主題歌を奏でるハーレーを乗り回すような、アメリカかぶれで暴走族じみた破天荒ジジィであった。
そんな風体なのに、その実、どこぞの不動産系会社の社長さんであるという。
つまり冬樹の父はれっきとした御曹司であり後継ぎだったのに、現在はまったく違う業種の一般会社の1サラリーマンだった。
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