踏み出した一歩

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階段を上り終え、廊下を歩いていると、こんどはミシミシと音がはっきりと聞こえ、国枝は肩を揺らした。 (……何かいる) ゴクッと喉を鳴らし、国枝は目を見開いた。 いつの間にか握りしめていた手は、汗でべとべとに湿っていた。 汗ばんだ手の気持ち悪さよりも、国枝は音の正体が気になっていた。 (たしか、ここらへんから聞こえたよな…) 着いた先は、2人部屋の寂れたドアの前。 ドアにそっと耳をあててみると、微かに床がきしむ音が聞こえた。 (…) ふと、ネズミのイメージ画像が頭に浮かび、それを消そうと国枝は頭上で手で払う仕草をした。 (…ないない。ていうか、考えるな。まだネズミと決まったわけじゃないんだ) 平常心を保とうと、深呼吸をしてみたり、屈伸をしてみたりするが、どうみても落ち着かない様子…。 バタンッ 「!?」 突然の物音に、国枝は肩をビクつかせる。 (あ…) ポケットに入れていた音楽プレイヤーが床に落下し、次に耳にはめていたイヤホンが落下する。 イヤホンからは、微かに音漏れが聞こえ、国枝は、ヤバい、と顔を歪めた。
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