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本心だった。
家族の誰よりも苦労した兄を、本当はずっと解放してあげたかった。一番、犠牲になり続けた兄には幸せになって欲しかった。
兄が背負い込み過ぎている事も分かっていたから、好きな道を歩んで欲しかった。
兄もまた、兄なりに葛藤があった事。あたしだけが辛いのではない事。全部気づいていたからこそ、前へ進んで欲しかった。
大量の涙を頬に流しながら、兄は「ごめんな」と呟いた。
涙で歪んだ夜桜に、強く大きな風が吹く。
桜吹雪が一帯に舞い、広範な薄紅の海となる。
儚い桜の花びらと共に
翌朝、兄は家を出て行った。
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