episode-3

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 兄が去った後にあたしの背中を押した「何か」とは、実は自分でもよく分からない。 本来潜在していた物なのか。それとも、あの夜の兄に感化されてできた一時的な物、なのかもしれない。  それでも、確かに言える事がある。  兄が去る前にあたしに与えてくれた日々は、一生の宝物で、掛け替えのない日々だったと言う事を。  兄が去る前にあたしに与えてくれた日々が、多くの擦れ違いであったとしても、決して無駄ではなかったと言う事を。  人に手を繋いで貰える温もり。人に守って貰える安心感。人に感謝する誠実さ。人を想う献身さ。  兄と過ごした日々はあたしの中で生きていて、これからも共に生き続けると言う事を。  あたしは確かに言える事で、兄にとってもそうであって欲しい。
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