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僕は操り人形。
猫の操り人形。
黒いからだに
黄色いめだま
尻尾はないの
あの子が持ってるの
中からわたが
はみ出ているよ
痛い 痛い
でもね
誰も僕の声を
聞いてくれないの
誰も治してくれないの
だからずっと痛いまま
僕は我慢するの
だってね
もうすぐあの子が
僕を観に来てくれるんだ
だからねだから
放り投げられたって
踏まれたって
握り締められたって
苦しくないよ
痛くないよ
きっとね
あの子が迎えに来てくれるから
僕を助けてくれるから
信じてるの。
ずっとずっと。
真っ暗な箱の中に閉じ込められてもずっとずっとがまんした。
ある日、僕を持って
おじさんにどこかへ連れていかれた
明かりに照らされて
とっても眩しい
あの子がいたの
おじさんが僕を
あの子の手に
渡そうとした
僕の声聞こえるかな
君になら聞こえるよね
ねぇ話したいことが
いっぱいあるんだ
早くお部屋に帰ろう
そうしたら僕の尻尾を
治して欲しいんだ
「こんな汚い人形知らないわ。」
あ。
あ。
待って。
待って。
痛い
痛いよ
どうして僕を投げるの?
ねぇどうして
「おじさんバイバイ」
痛いよ
痛いよ
どうして踏むの?
わたが わたが
いっぱい出ちゃったよ
ねぇ
助けて
助けて
痛いの
治してよ
ねぇ
待って
まって。
―ガチャン―
「これでお前はまた操り人形だな。はっはっは。」
指でつままないで。
ちゃんと僕を持って欲しいんだ。
おねがい。
あ。
あ。
僕の尻尾
落ちてた
ああ。
君はやっぱり僕のこと
覚えていたんだね
嬉しいよ僕
すごく嬉しいよ
「しかしぼろくせぇなぁ。なんかちげぇの拾ってくるかな。」
ポイッ―
投げられた。
捨てられちゃった。
あ。
ああ。
―タタタ―
あったかい。
―ぎゅっ―
君 だ 。
「…ごめんね…ママに言われて酷いことしちゃった…。ごめんね…ごめん。」
マロン、おうちかえろう。
おわり。
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