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【同日10時0分】
僕らはファミレスに辿り着いた。
さすがにまだ昼ごはん時じゃないから混んでないだろうと思ったが、思ったより人がいた。
僕は紙に『ハルカゼ』と書き、禁煙席に丸を書いて、『2名』と記入した。
10分後、店員が僕たちに話しかけてきた。
「お客様、禁煙席ならすぐにご案内できますが、どういたしますか?」
「どうするはるえ?」
「いいよ別に。」
「じゃあ案内してください。」
「かしこまりました。」
僕たちは席に案内された。
メニューを注文し、しばらく語っていると、1人の女性が近くの席に座った。
僕はその女性を見た。
見た目からして25、26歳ぐらいだろうか……。
(きれいな人だなあ……。)
僕はそう思った。
女性は綺麗な肌をしており、男を引き寄せる磁石といっても過言じゃないだろう。
彼氏でも待ってんのかな?
「私なんかより、あの女性の方が好みなの?」
はるえが睨んできた。
「違うよ、この世で好きな女ははるえ、君だけさ。」
僕は指を振った。
「何それ。」
はるえは笑った。
しばらくすると料理が届いた。
僕たちは喋りもせず、食事をとった。
5分ほど経っただろうか。
1人の男があの女性の席に座ってきた。
(さっそく吸い寄せられてる男がいるな。ていうか彼氏だろ絶対。)
僕はそう思った。
そしてまた食事に戻った。
するとはるえが喋り始めた。
「ねえ慶晴はさあ高校でも剣道部やるの?」
突然の質問だった。
「あぁ、あれな。」
僕はきっぱりと答えた。
「もうやらない。」
「どうして?」
「だって練習きついもん。」
「でも全国大会で優勝したじゃん。」
「そりゃそうだけど、練習したり、世間にちやほやされるの、もう疲れたんだ。」
本当だ。
中学の頃、剣が好きで剣道部に入った。
しかし来る日も来る日も練習の毎日で、家族や友達と遊ぶ時間や夏休みが減り、うんざりした。
やめたいときもあったが、両親に「男が1度決めたことは最後までやり通せ。」と言われたので、中学3年の夏休みまで頑張った。
だから高校は帰宅部をするつもりだ。
「そう……。でもハルが決めたことだからね。好きなようにしな。」
「うん、ありがとう。」
はるえのやさしい言葉に僕はちょっと感動した。
僕がはるえに惹かれたのはこんなやさしさがあるからだと僕は思った
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