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普通なら断る。間違いなく悩むことはない。 しかし、情けないが現状は金がいる。家賃は何とか払ってきた。だがそれは借金をしてである。 親類や友人からの借金ではない。電柱に携帯番号を貼付けているような輩からだ。そろそろ追い込みが始まるだろう。 アイツら存在は曖昧模糊としているくせに仕事はキッチリこなす。確実に、執拗に取り立てる。 今目の前の300万。これはデカイ。借金を返済してなお半年は凌げるだろう。 就活だって正直手詰まりだし、気持ちもまったくノッてはいない。 これは非常にマズイ話だとはわかっていた。頭では理解している。 しかし即座に拒否し、追い返そうとしない俺がいた。 静寂。 煙草の煙りが漂い、男の満面の笑み。300万円。
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