7/7
前へ
/245ページ
次へ
「1260円です。お弁当は温めますか?」 「うん、お願い」 考えてみたら彼女のある程度の情報を得るのは簡単だった。 明日の朝にでも、役所に行って自分の戸籍謄本を見ればいい。 少なくとも名前くらいは解る。 「お待たせしました。ありがとうございました」 温まった弁当の入った袋を受け取り、コンビニをあとにする。 まあしかしだ。言葉も通じず、多少歩み寄ろうという姿勢も見せない相手。名前ひとつわかったところで仕方ない気もした。 名前も国もない妻。 笑うしかない。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

134人が本棚に入れています
本棚に追加