絵描きと写真家志望

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駐車場からの道は、緑色に揺れる丘を上るように伸びている。 両側に拡がる瑞々しく鮮やかに拡がる芝生は、ブワリと吹く風で、一斉に波を打った。 丘を上りきれば、三十路から五つ程通りすぎた若くない身体は、ゼエゼエと息を上げる。 一度立ち止まり、大きく息を吐き出した。 じんわり汗の浮く額に、冷たい風が逆に心地いい。 一息ついた俺は、再び鞄を持つ手に力を入れて丘を下る。 前方に見えるのは、案内板によれば一周約1キロ程度の池。 護岸工事をされコンクリートに覆われた岸辺と、繁る葦、のんびり泳ぐ水鳥、時折跳ねる魚の水音。 ここの景色は昔から変わってない。 子供の頃は、友達連中で自転車飛ばしてよく来たもんだ。 そんな懐古的な感傷に浸りつつ、俺は池を囲む砂利道に出た。
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