絵描きと写真家志望

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靴底に砂利の感覚を覚えながら池の縁を歩く。 昼食時のせいか、人気(ひとけ)のない公園内。 車を降りてから漸く人に遭遇したのは、池を半周した辺り、駐車場とは対岸に位置する小さな東屋の前だった。 屋根の下のベンチに腰掛ける一人の老人。 いや、老紳士と言った方が雰囲気が伝わるかもしれない。 ライトブラウンのキャスケットと品の良いカーキ色のトレンチコート。 英国紳士なんて言葉がぴったりの壮年の男性だ。 彼は俺の視線に気が付いたのか、木製の画板から顔を上げた。 緩くカールする白髪の隙間から覗く人懐こそうな小さな目が、ニコリと笑ったような気がした。 おっと、あまり見るのも悪いと言うか、初対面でガン見なんて失礼だ。 俺は慌てて軽く会釈をし、ばつの悪さを誤魔化す。 けれど彼は、相変わらずニコニコと笑顔のままで口を開いた。 「その鞄、写真家さんかね?」 彼の指が示すのは俺の腰の辺り、直方体に角張ったカメラ持運び用の鞄。 まあ、カメラマンがよく提げているのを見掛けるだろうから、別に驚くことでもない。
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