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お父さんに連れて帰られたあの日、お母さんは私が大嫌いだといって飛び出したことなんかなかったかのように私に切り出した。 「よかったわね。巽が一緒に東京で住んでくれるから、東京の大学いけるわよ?」 巽が? 驚いて、ソファに座る巽を見るとえらく機嫌が悪い。絶対に納得してないけど? そう思うと、お母さんは嬉しそうに続けた。 「どうせ巽なんか何処で仕事しても一緒だし、毎月一週間はあっちに帰ってるんだから向こうで仕事するようにしてくれるって。ただね、どうしてもこっちに帰って来たいって駄々こねるから、半月東京で半月山口でって、ことになるのよ。柚一人で半月も生活できる?」 40後半の人に向って、駄々こねるって言ったよこの人。 って、えっ!巽と私が一緒に住むの?? 「えぇぇぇ!!あり得ないっ!だって、お母さんの兄妹じゃないんでしょっ!なんかあったらどうするの!」 その時、確かにブチッと音がするのを私は聞いた。 そう、巽の堪忍袋の尾が切れる音だよ。 素早く立ち上がったと思えば、私のほうへと物騒な笑いを浮かべながらちかづいてくると、ガシッと両腕を掴まれた。 「てんめぇ!なんで俺がお前となんかあるつー発想がでてくんだよっ!ふざけてんのか?あぁ?娘に手ぇ出す親が何処にいるっ!大体お子さまに手を出すほど困ってねぇんだよっ!」 ぶはっと隣でお父さんが吹き出し始めると嬉しそうに巽の肩を叩き始めた。 「お疲れ、巽。お前が受験させたんだもんな?当然だよな?安心しろよ、お前のいない間は、ゆっくりきらと仲良くしとくから」 お母さんとは別の意味で心底嬉しそうなお父さんは、まるで悪魔の尻尾がはえているみたいに見える。 笑い方がスッゴク意地悪なんだよ。 「あぁ、淋しくなるなぁ。そうか、柚も、巽もいなくなるのかぁ。あぁ残念」 全然。残念そうじゃないんだけど。 むしろ滅茶苦茶嬉しそうだった。邪魔者が消える的な感情を感じるんだけど。
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