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けれど、叫びは止まらない。
「信じられない。ありえないっ!なんで今まで黙ってたのよ。いいよ、学費さえ出してくれたら後は自分でなんとかする。お父さんの許可なんていらないっ!!自分でバイトするから!私は東京に行くから!こんな家も、お父さんもお母さんも大ッ嫌い!!」
「柚っ!!」
お父さんが怒鳴っても全然恐くなんかない。
私はもう、大人だもの。
自分で生活しようと思えば出来るもの。
私は身を翻して家を出た。
一秒だってこんなところにはいたくない。
お父さんからも、お母さんからも、そして、巽からも逃げ出したかった。
玄関が背中で閉まる瞬間、巽ののんびりした声が聞こえた。
「あ〓あ、青春だよなぁ」
人が真剣に怒ってるのになんて言い草なんだ!
けれど、そんなことに構ってる暇はなくて私は怒りにまかせてマンションの外に出るとそのまま走り出した。
遠くで雷鳴がする。
春雷だ。
よく見れば海が大きく荒れていて、遠くの空も黒く染まっている。
雨が降るのかもしれない。
ちらりと頭を掠めたそんな考えもすぐに泡のように消えてしまった。
だから、そのまま勢いのままに走り続けた。
その時私はちゃんと理解できていなかったと思う。
巽が叔父じゃない。
それは私にとって悪い話じゃなかったのに。
家族が家族じゃなかった、例え恋心を抱いていたとしても、やっぱり巽は家族だったから。
家族じゃない。
それは想像以上に私の胸を締め上げていた。
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