序 章

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その日は、夏バテで顧問が倒れてしまい、急遽部活が休みになって私はいつもより早く家に帰ってしまった。 学校から家までは自転車で三十分の距離で、暑い日差しを避けるように日陰を選びながら自転車をこぐ。 額から滑り落ちる汗を拭いながら私は自宅のマンションを目指す。 毎日同じことの繰り返し。 田舎は娯楽がすくない。 映画を見ることすら車で一時間かかるような具合で私は毎日この生活から抜け出したくて、刺激を求めていた。 けれどもあんな刺激は求めていなくて今あの時の私に言えることがあるならば、直ちに回れ右をして、学校へ引き返すなり、友達の家に遊びに行くなりして家に帰るなと伝えたい。 その暑い夏の日。 私は見てしまった。 恐らくは見てはいけなかった。見ないほうが幸せだった。 私のこの想いに気付かずに済んだ。 報われない想いが本当に存在するなんて。 なぜ、私はこの想いに気付いてしまったのだろう。 私の恋は真夏の昼下がりに始まった。 それは決して叶う事のない恋。 今でも世界中を探してもこんなに愛しい人はいないのに。 私の想いは夏の暑さに溶けてしまえば良かったのかもしれない。
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