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お父さんは、そのまま嬉しそうに鼻歌でも歌いだしそうな勢いで弟の遥の部屋へ入っていく。 「遥!柚が東京の大学行くってさ。巽も半分あっちで柚と二人暮らしするらしいぞ」 「えぇ!!ずるいよっ!僕も東京行きたいよっ!!」 不満そうな遥の声が聞こえる。 遥は今年高校二年になる。丁度私と二つ違いで、別の高校に通っているけど、お父さん譲りの顔の良さで地元じゃファンクラブまであるらしい。 実際、噂を聞きつけた芸能事務所の人が挨拶に来たこともあった。 確かに、黙っていれば美少年だとは思う。肌白いし、まつげバサバサしてるし、線も細い。 けれど、如何せん口と性格が悪い。中身は巽そっくりだよ。まぁ、私も人の事いえないけれど。 その、遥が部屋から出てきて巽に恨めしそうな視線を送る。 「ずるいよ、巽。僕もあっちの高校行きたい。いっそのこと家族で移住しようよ。東京ならこっちと違って職もあるでしょ?」 「馬鹿いってんじゃねぇよ。てめぇは東京の大学すらいけねぇよ。お前に都会は無理だ」 遥の頭を撫でながら苦い顔をする。私の時は二つ返事で親に内緒で受験をさせてくれたのに、遥には苦い顔をする。 遥だって、けっして頭は悪くない。多分けっこうレベルの高い大学を受験できるはずなのに。 私と違って男の子なんだし、親の心配だって、私より少ないよね。
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