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玄関をでれば、雨上がりで空気が澄んでさらに美しく見える夕焼け空が広がっていた。 どこかから、いい香りが漂ってきていてもうすぐ夕食の時間だということを知らせている。 マンションのエントランスで、仕事帰りのOLさんとすれ違いながら軽く会釈するけれど、挨拶が返されることはなかった。 都会の人だからか、それともこのマンションに住む人がなのか、分からないけど挨拶をしても返されることは少ない。 地元じゃそれこそ考えられない事だった。近所の人達はみんな陽気で、おせっかいな人も多かったから挨拶なんて当たり前だったし、みんな笑顔だった。 だから、今みたいな会釈程度の挨拶はこっちに来てからだ。声を出しても答えてくれないから、つい、会釈で済ませてしまうようになっちゃったんだよね。 それも寂しいよなぁ。 コンビニまでは、歩いて三分の道のりを歩きながらそんなことを考えていた。 無機質な光りが店内を明るく照らし出している中、私はちょっとだけと入り口近くに並べてある雑誌を手にとった。 あぁ、そうだった。メイク覚えたいんだよなぁ。みんなキレイなんだよね。都会の匂いっていうの?洗練されたファッションにメイクは私の心を震わせた。地元にいた頃はメイクしようなんて思ったこともなかった。けれど、キレイな女の子達に囲まれるたびにどこか引け目を感じてしまう。 今私は綺麗になりたい。その想いが強くて、次のバイト代が入ったら一式揃えようと決めていた。 私、ファンデーションとグロスしか持ってないんたもん。 あぁ、でも洋服はどうやら合格点らしいよ?奏さんがくれた洋服は大人気のブランドらしくて今、手に持っている雑誌にも特集が組まれている。
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