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今、和泉先輩、「じゃない」って言わなかった?
いやいや、まさか。
私の幻聴だ。
幻聴に決まってる。
御願い幻聴だという事にしておいてください。
こんな爽やかで格好いい人が、ないない。
よし、今ちょっと足が内股に見えるとか、口元を押さえた手の小指が立ってるとか。
よく考えればWINDYは女性ブランドだとか。
気にしない。
見なかった。
よし。
「じゃぁ、奏さんの会社の服をくれてたんだ。私、今丁度雑誌を見ていて、びっくりしたんだよ、この間貰った洋服載ってたし値段が凄かった」
何事もなかったように笑いながら言うと、奏さんはもっと口元を緩めた。
「値段なんて気にしちゃだめだよ。全部、晶と柚の為に作ってるんだから。ソレをついでに販売したら思いのほか上手く軌道にのったんだよね」
奏さんはさらりと恐いことを言うよね、ホントに。
「私とお母さんの為?」
「勿論。柚が生まれるって聞いて慌ててベビー服と子供服のブランド立ち上げて、ついでいお揃いを晶に着せたくてレディスにも手を出したんだ」
なんか何気にとんでもないこといってるよね?
「柚が僕の作った服以外の服を着るなんてありえないでしょ?僕が一番柚と晶に似合う服をわかってるのに。なのに、赤城さんまで乗り出すから変なことになるんだよ」
あぁ、りく伯父さんも洋服持ってきてくれるよね。あれもまさかりく伯父さんの会社の服とかいわないよね?
でも、奏さんは小さい頃から可愛がってくれてるよなとは思ってたけど、ここまで可愛がってくれてたなんて思いもしなかった。
「あぁ、だから着てみたいデザインを教えてってことになってたのか。私ただのアンケートだと思ってたよ」
そう、苦笑すると横から小さく、「なんて贅沢な子なのっ」とくやしそうな声が聞こえてきた。
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