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「さっき紹介したじゃないですか。和泉・・・・」
「柚、蒼って呼びなさいって言ったでしょ」
最後まで言わせずに、すかさず切るように言われる。先輩を短く呼び捨てあり得ないんだけど、本人がここまで言うならしょうがないか。
なんか、私が後でお仕置きされそうで恐いし。
コホンと咳払いをしてから私は蒼の目を見てはっきりといった。
「さっき紹介しました。奏さんは蒼と違ってノーマルなのでコレ以上は駄目です」
目の前で蒼の眦がつりあがっていく。
「んまぁぁぁぁぁ!!なに?この子っ!随分短時間でふてぶてしくなったじゃなぁいっ!!いいわよっ!自分で仲良くしてもらうからっ!」
ハンカチを出して噛み締めそうな勢いだよ。いや、ただのオカマさんのイメージなんだけど。
「大体、アタシと違ってノーマルってどういう意味よっ!失礼しちゃうわねっ。差別よ差別。さーべーつーっ!アンタ心狭いわよっ」
「どこが狭いんですかっ!空のように何処までも飛んでけるくらい広いでしょうがっ」
「あらっアンタ、お馬鹿なのね。ソレを言うなら海でしょうが。あぁ、これが同じ大学に通ってるなんて嘆かわしいったらありゃしない」
片手を私の頭の上でひらひらと揺らす仕草に無性に腹が立つ。
蒼の弱みを握ったのは私のはずなのに、なんでこんなに上から目線なんだよっ!
「海より空のほうが広いじゃないですか。蒼こそそんな簡単なこともわからないんですね。あぁ、可哀相」
ピタッと沈黙が訪れた。
アレ?すぐに言い返してくると思ったのに。
沈黙が重たく、チラリと伺い見ると蒼は不気味な笑みを浮かべていた。
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