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コンビ二入り口では、アイスの入った袋を片手にぶら下げて奏さんが目を丸くしていた。
「柚、和泉君と随分と仲が良さそうだね」
「柚は恥ずかしがりやで。本当はこの間から付き合ってるんですよ。今、ちゃんと恋人だって紹介してくれるように頼んでいたんですけれど中々うんと言ってくれなくて。お待たせてして申し訳ありませんでした」
ぺらぺらとまぁ、滑るように口から言葉が繰り出されている。さっきまでのナヨッとした雰囲気は綺麗さっぱり消えてしまっていた。
どこからどう見ても立派な男の人だ。私の知るいつもの和泉先輩にちょっとほっとしていた隙に蒼はとんでも話を奏さんに聞かせていた。
・・・・・・・おぅい。こら。
誰が、何処で、蒼に一目惚れして。会って三秒で告白して速攻振られて、その後アタックしまくったって??
それに負けた形で付き合い始めたってっ!!
よくも一瞬でこんなに嘘を考えられるよねぇ。
諦めて溜息まじりに俯けば、奏さんが大きな声を上げた。
「このっ柚がっ??信じられない。あぁ、お祝いしなくちゃ。初彼だっ!赤飯っ!じゃないレストラン。ほら、君もおいでご馳走してあげるから」
さっさと身を翻して早足で歩き出す奏さんはすぐに振り返って私達に手招きをした。
「うわぁ、晶に報告しなくちゃ。あっちょっとまって、電話するから」
奏さんは携帯をさっと取り出して、物凄く上機嫌に電話をかけ始めた。
まだ肩を組んでいる蒼を見上げると、こちらも上機嫌になって笑っている。
「女心と秋の空」って感じにころころ機嫌がかわるよこの人。
女じゃないけど。
この確信的な行動にあきれつつも、蒼を嫌いになれそうもない事気付いて私も少し微笑みを返した。
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