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嫌そうにお父さんは顔をしかめるとお母さんを見た。お母さんは目を丸くして自分を指さす。無言で頷くお父さんに、お母さんは頬に手をあてて溜息をついた。
「もう、うちの男共は情けないんだから」
そう言って、私を真っ直ぐに見た。
「ちゃんと話したことなかったけれど、巽は私の幼馴染でパパの親友なのよ。ただ、ほらここは田舎でしょ、他人が家に居候していて、昼間は私と二人きりなんて、変な目で見られても困るから兄妹って事にしてあるの。それにほとんど兄妹同然に育ったから」
変な目って、兄妹同然って・・・・・巽はお母さんの事好きなのに?
夏の日に昼寝しているお母さんにキスをしていた巽が目の前に浮かんだ。
アレは、家族に対する想いなんかじゃない。兄妹なら絶対に成就する事はないけれど、赤の他人ならば話しが別だ。
お父さんは馬鹿なのか?
自分の親友が自分の奥さんに横恋慕している事もしらないで昼間に二人きりにするなんて。
お母さんも馬鹿だ、気持悪い。
目の前に座る両親が急に色あせて見える。なにが、親友。なにが、兄妹。
馬鹿じゃないだろうか。
巽の気持を知っている、見てしまった私には到底信じられない話で、この家を出て行きたい気持がさらに大きくなる。
だって、気持が悪いよ。
黙る私に不安になったのか、お母さんは私の腕を擦ろうとする。
「触らないでっ!!」
気付いた時には叫んでいた。
傷ついたように見えるお母さんの顔に胸の奥がホンの少しだけ痛む。
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