第43章…自覚

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詩音 自室ーー バサッ、バサッ、濡れている着物を脱ぎ捨てて新しい着物へと着替えていく。 水で湿った着物は広げて乾かすために吊り下げておいた。 [……思ってたよりも濡れてる……] 吊り下げる前に軽く絞ったが中々水分はぬけ切れていなかった。 [外で干そ。そのほうが良いや] そのまま吊り下げていた着物を取ると部屋から出て中庭へと向かう。 水が床へと落ちないように丸くまとめて桶に入れる。 [あー、洗濯物増やしちゃったな……] 桂がまだいるであろう中庭へ向かっていた途中、角を曲がれば中庭という地点で今とてつもなく詩音にとって会いたくない人の声が聞こえた。 耳が良かった詩音は、気配に気づかれないようにゆっくりと壁際に寄った。 「桂さん、本当に洗濯好きですね」 「稔麿は好きじゃないのかい?綺麗好きだろう?」 「汚れてるよりは綺麗な方が良いじゃないですか。それだけの事ですよ」 「君は本当に考えが単純なのか複雑なのか分からないね」 「…きっと、単純なだけなんですよ」 中庭で羽織りを干している桂の後ろ姿を縁側に腰掛けながら眺める吉田 膝に腕をかけ、頬杖をしていた。 ボーッと、、ただ後ろ姿を眺めている。 桂「それで?何か話があったんじゃないのかい?」 吉「……桂さんって、こういう時鋭いですよね。どうしてです?」 桂「君が途端に弱々しく見えるからかもしれないね」 吉「………ハハ、適わないな…桂さんには」 気軽に会話をしている2人の辺りの空気は穏やかで、警戒心の強い吉田が別人に見える。 まるで少し年の離れた兄弟のような雰囲気だ。
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