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[沙夜…さん………か、、]
ボソッと、気づけば口からでていた名前。それは自分にとっては少し特別な存在の者のものだった。
少し離れた場所では、自分の名前や自分の母の名前が出ている。
気恥ずかしいような…むず痒い様な、そんな感覚だった。
何故かさん付けで呼んでしまう母の名。
遠い存在だからか、そうではないのか、詩音にも分からなかった。
[………はは………う…え]
今までに、「母上」と最近呼んだ事など一度もない。
呼んでいたのだって記憶の中では十年以上昔。記憶だって薄れている。
しかし、微かだが確かに懐かしさも残っていた。
桂「そういえば稔麿、よく君は沙夜に遊ばれていたね」
吉「遊ばれてなんて……、……あの人、人をからかうのが好きなんですよ」
桂「まぁ一番の餌食は九一だったけどね」
吉「見事にあれは遊ばれてましたね、なんか可哀想になるくらい」
桂「本当に…。九一自身は記憶から削除してるらしいけど。」
吉「でも、良い思い出ですよ」
桂「今となってはね…。沙夜も、何だかんだ色々と考えていたんだろうね。九一は大人しかったから」
吉「……………。」
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