第44章…隔心

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胸元から手拭いを取り出し、人と人の間をすり抜けていき抜け出した時には町人の姿をしていた時とは別人だった。 髪も結っていたのをほどき緩やかなうねりをつけていた。紅を付け、見るからに女性だった。 着物は町人の時に持っていた風呂敷の中に入れていた羽織りを肩からかけ、女性らしさを出している。 短時間で出来るのはこれが彼だからと言える。 「女から町人、また女…でもこれが一番情報聞き出せるんだよね~」 「男って女には弱いから」 クスリ、と笑いゆっくりと息をはく。落ち着かせ、自分に余裕を持たせる。 そうする事で優秀な観察方である山崎丞は出来上がるのだ。 見た目も、雰囲気も、声色も、今までとは全く異なり女性だ。 山「さてさて長州の方々…御覚悟下さいね。あなた方から情報ひねり出してみせますから」 ジャリ、ジャリと砂利道の音が聞こえる。 先ほどの人混みとは違い、少し歩けば辺りは静かになっていた。 「………副長にご報告せねばならないな。これは、…一体どこからアイツはこんな情報を手に入れるんだか……。」 だれにも見つからないよう、胸元にソッと隠しておく。斎藤も冷静さと的確さを活かし潜入などを得意としている。このような役割もまた斎藤と山崎の仕事であった。
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