第46章…想い

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一度戻ってきた吉田さんも、あの日から戻ってきていない。 桂さんも、高杉さんも、九一さんも、どこかへ行ってしまった。 [……] ジッとしていられなくて少し出掛けようとし、藩邸から出て行く。 藩邸の中とは違い町は賑わっていた。 人通りも多く、いつもの見慣れた景色だった。 ふらっと、近くの茶屋に足を運びお茶と団子を頼んでいると近くに座っていた人達がコソコソと話しをしていた。 「京も物騒になりはったなー」 「壬生狼かいな」 「何でも、長州の間者を捕まえたって」 「それって、あの枡屋?」 「取り押さえられたって聞いたけどねぇ」 [!………] ーー長州の人が新撰組に取り押さえられた…?枡屋… 気づいた時には詩音は立ち上がり話しをしている町人達に近づき話しを聞いていた 「あんた、あの騒ぎ知らんのか?」 [ぁ…少し、風邪をこじらせていたので外に出ていなかったんです。] 「斬り合いだよ。斬り合い。浪士達が暴れてたんだよ。まったく、往来で止めてほしいねぇ」 「あの浅葱色のだんだら羽織りを見ただけで寒気がするよ」
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