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ポタ、ポタ…、と自然と溢れてくる涙
その事に一番驚いている詩音自身
手紙の差出人、内容、全てが信じられなかった。
自分の定かではないうっすらな記憶の中の人。夢に出てきた優しい人。
内容からは自分の事をとても心配してくれているというのが痛いほど分かる。
[はぁぁぁ、まいったなー…これ。考えてもなかった。]
桂のあのいつも以上にニコニコしていた笑顔を思い出し、納得がいった。
[……よし。終わったら、許しを得て行ってみようかな…。萩へ…]
…………
…………………
吉「……結局は池田屋か。きっと目を付けられてるって思わないのかな…あの人達は」
吉田は決まった事を桂に伝える為に日が落ち始め薄暗い街の中をスタスタと歩き藩邸へと向かっていた。
藩邸が見えてくると、門の前に人影があった。
吉「桂さん、」
桂「で、どうだった?」
吉「池田屋です。」
桂「ぁー、そうか…。もう決定事項?」
吉「まぁ…ほとんど決まりですよ。皆言ってましたから。寄りによって、枡屋の近くって…納得いきませんよ」
桂「あの場所は夜でも人通りが多いから、身を隠せるには丁度良いけどね。」
吉「身を隠す……ね。」
桂「意見しなかったのかい?」
吉「しましたよ。先送りにしようって。まぁ、ご覧の通り却下されましたけど」
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