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桂は素早く支度をし、渋い緑の襟巻きをつけ口元を少し隠す。
[そうすると、すれ違っただけでは分かりませんね]
桂「そうだろう?これで大抵逃げられる」
[でも暑くはありませんか?]
桂「まぁ、少しね。慣れればどうってことないよ。ほら、晋作なんて一年中だしね。」
[凄いですよね…]
桂「あれこそ私には出来ないよ。」
話してはいるが着々と準備を終わらせていく。
外まで見送る為に行き、刀を渡すと二本腰にさし少し後ろにいた詩音の方を振り向き、「行ってくるね」と頭をポンポンと軽く撫でる
いつも桂は出掛けるとき、決まって頭を撫でる。
[行ってらっしゃいませ。]
そう言うとニコリと笑い、藩邸から出ていった。
後ろ姿を見送り、屋敷の中へ戻り座敷の襖を開くと少し戸惑った。
[……こんなに広かったっけ…。この部屋]
ガランとした広間
いつも皆集まって話をしたり、支度をしたりしていた。
[早く、帰ってきて下さい……みんな、]
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吉「まったく、何も今日でなくたって。」
浪士「今日でも明日でも同じ事。だが、やるからには早い方がいい。」
吉「だからって、古高が捕まったばかりですよ?幕府どもに情報が伝わっていたっておかしくない筈。もう少し様子を見た方が得策かと。」
浪士「まだ言うか吉田。随分弱腰だな」
吉「弱腰で結構。死ぬのは怖くありませんが無駄死には嫌です。」
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