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[っ、ぅ、……っ、]
………
………
〔あ。また泣いてる〕
〔泣いてない、もんっ!〕
〔目と鼻を真っ赤にさせてよく言うよ。もっと誤魔化し方あるでしょ?隠す気ないでしょ〕
〔栄太郎さん、意地悪ですっ、、〕
〔じゃあ君はその意地悪に負けるの?〕
〔負け、ませ…ん!〕
〔なら、さっさと涙を拭いて。泣き止んでよ。よくそんなに涙が流せるね。水分取りすぎなんじゃないの?〕
〔ぅ、……、泣いて、ないですっ、〕
〔分かりやすい嘘つかないで。
ぁぁぁぁ、もう。ほら、何で更に泣くのさ。〕
頬を両手で包み込む。
真っ赤にさせていた目を優しく親指で拭う。
〔これじゃあ僕が泣かせたみたいじゃん。たまたま君が泣いてる所に居合わせただけなのに。
慰めてもらいたいなら優しい明音の所に行きな。僕は甘やかしたりしないからね〕
〔……泣いて、ないです…!〕
〔まったく…。強がり。強情。意地っ張り〕
口では厳しい事を言うが、手ぬぐいを貸し、詩音が泣き止むまで側を離れる事はなかった。
………
…………
頭に流れてくる昔の記憶
何故、泣いていたのか覚えてない。
きっと理由は小さい事だったと思う。
泣いてるのに泣いてないと言い、理由も言わずに泣いている少女を決して一人に彼はしなかった。
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