第49章……最期

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そして 運命の日ーーー その日は朝から忙しかった。 早朝から平助が何かを抱えて訪れたと思えば中には白い着物があり、それを隅に置いたと思えば「よし!語ろうぜ!」と笑顔で言い出し、驚く詩音をよそに平助は普段と変わらない様子で話しだした。 詩音がいない間に起こった事や、 自分の隊士達を不機嫌な沖田に稽古だと言われボコボコにされた事。 原田に連れ出された呑みで酔いつぶれた原田を抱えて帰ってきた事 たまたま具合の悪かった斎藤が意識朦朧の中道場で素振りをしていた時に出くわし、木刀をぶん投げられた事。 散々愚痴ったと思えばそれだけで終わらず、詩音を以前彼女が使っていた部屋へ連れて行った。 すると部屋の中には斎藤がおり、 部屋は自分が使っていたまま物の場所等のは何も変わっておらずただ掃除だけされていたのか綺麗になっていた。 それまで何も話さずにいた平助は自分と詩音のおでこをコツンとくっつけ、「またな、」と言うとニコっと笑い、「一君後よろしく」と斎藤に伝えると部屋から出ていった。 斎「…ここからは俺だ。この中から好きな物を選んでくれ」 […これ……] 畳の上には沢山の羽織りが広がっていた。 赤、青、橙、緑、 花の刺繍や鳥の刺繍が鮮やかに入っていたり等、 みるからに高価な物だった 斎「お前の好みに近い柄を選んだつもりだが、気に召さなかったか?」 [……どうして、、こんな……] 斎「着物は難しくても羽織りならば問題ないだろう。綺麗に着飾って悪い事はない。 むしろ、これくらいしなければ気がすまない」 [………斎藤さんが、選んで下さい。 私には、……選びきれませんよ。こんな、沢山] 斎「ならば、これが似合うだろう」 店で見た時からこれ一択だった、と詩音に羽織らせる。 青の生地に白や黄色の花柄の刺繍が施されていた綺麗な羽織りだった。
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