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原田の優しさに涙が出そうになった詩音だが、
唇を噛み締め我慢する。
こんな所で涙を見せる訳にはいかなかった。
原「じゃあ、行くぞ」
そして、ーーー
裏庭には数人が集まっていた。
近藤と土方が真ん中に座り、
平助、斎藤が並んでその横に立っていた。
詩音を連れてきた原田が平助の横へ移動する。
近藤達の座る場所から少し離れた正面に、地べたに茣蓙が敷いてあり、短刀が準備されていた。
そしてその座敷の近くには襷掛けをし、刀を手に持っていた沖田がいた。
近「…………」
土「前へ。」
詩音は茣蓙の上へ移動し、短刀が準備されていた前に立ち、ジッと近藤と土方を見つめた。
その様子に近藤は泣きそうになりながら必死に我慢しているのが分かった。
近藤の代わりに、土方が口を開く
土「瑞宮詩音、お前は新選組監察方に属しておきながら、情報収集として長州方の密会。
更に、新選組からの無断脱走及び池田屋内での隊士殺害。
裏切り行為と見なすが、間違いないか」
[はい、間違いありません。]
土「弁解する気はねぇのか?」
[土方副長が仰られた内容に嘘偽りありません。
弁解する事もありません。全て事実です。]
近「……長州の輩に、脅されたとかではないのか?自分の命を守る為だったとか、理由があったんだろう?」
土「………」
近「そうだと言ってくれれば、すぐに処分内容を変更する。詩音、そうだったんだろう?」
[近藤局長が仰られた事は一切ありません。
脅された事も無ければ、新選組を脱した事も自らが選び行動しました。]
そして詩音は羽織りに手をかけ肩からずらし、白装束になると、短刀を手にするとーー
沖「人に介錯を任せるとか、何考えてるのか説明してからにして下さい。」
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