件の友人。

7/10
前へ
/50ページ
次へ
「あの……文さん……? 自分で食べられ……」 「あーん♪」 「文さん……?」 「あーん♪」 「あの……」 「あーん♪」 さも楽しそうに、太助の口にレンゲを近付けていく文。 「あーん、ですよ、太助君?あーん♪」 「……分かりましたよぉ、文さん…… あーん……」 はむっ。 レンゲで掬われたお粥を口に含むと、ほんのりとした卵の味と薄めの醤油の味が口の中に広がった。 「どうですか、太助君?」 「美味しい、です……」 覗き込むようにして訊いた文に太助がそう言うと、文は嬉しそうな笑顔になった。 「ふふ♪それは良かったです。 ふー、ふー……はい、あーん♪」 「あーん……」 文が太助の口元にレンゲを運び、太助は一度食べて抵抗する気が失せたのか、それとも空腹だったからか、素直に口を開いてそれを受け入れる。 「お粗末様でした、太助君。片付けて来ますね?」 文は土鍋の中に入っていたお粥を太助に食べさせ終わり、土鍋を持って台所へ戻ろうと立ち上がる。 「あの……台所に行く時に、新しい茶葉を持ってきて貰えませんか……?」 「えぇ、分かりました。無くなったんですか?」 「いえ……無くなる予定(・・・・・・)なので……」 「無くなる……予定? あぁ、そういうことですか。分かりました、水は足りてますか?」 太助の予定という言葉を一瞬疑問に思うも、彼の能力による予知だと直ぐに気付く所、伊達にこの家に来るようになって10年近く――もう少し長いだろうか?――も経っていないな、と文は思った。 「ヤカンで持ってきて頂けるとありがたいです…… あと、湯のみを六つ程……」 「分かりました。 紫さんが外界から持って来た、電気でお湯を沸かす……ポット、でしたか?があるから、沸かす必要は無いんですよね?」 「はい、よろしくお願いします……」 「任せて下さい、すぐ持って来ますね?」 そう言い残し、文が台所に向かうべく廊下に出て行くのを太助が見送っていると、廊下の反対側……縁側から声が掛かった。 「こんにちは、太助。体調は如何かしら?」 「遊びに来たよ、太助っ♪」 「お久しぶりです、太助様」 「いらっしゃいませ……レミリアさん、フランちゃん、咲夜ちゃん……」
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加