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「あの……文さん……?
自分で食べられ……」
「あーん♪」
「文さん……?」
「あーん♪」
「あの……」
「あーん♪」
さも楽しそうに、太助の口にレンゲを近付けていく文。
「あーん、ですよ、太助君?あーん♪」
「……分かりましたよぉ、文さん……
あーん……」
はむっ。
レンゲで掬われたお粥を口に含むと、ほんのりとした卵の味と薄めの醤油の味が口の中に広がった。
「どうですか、太助君?」
「美味しい、です……」
覗き込むようにして訊いた文に太助がそう言うと、文は嬉しそうな笑顔になった。
「ふふ♪それは良かったです。
ふー、ふー……はい、あーん♪」
「あーん……」
文が太助の口元にレンゲを運び、太助は一度食べて抵抗する気が失せたのか、それとも空腹だったからか、素直に口を開いてそれを受け入れる。
「お粗末様でした、太助君。片付けて来ますね?」
文は土鍋の中に入っていたお粥を太助に食べさせ終わり、土鍋を持って台所へ戻ろうと立ち上がる。
「あの……台所に行く時に、新しい茶葉を持ってきて貰えませんか……?」
「えぇ、分かりました。無くなったんですか?」
「いえ……無くなる予定(・・・・・・)なので……」
「無くなる……予定?
あぁ、そういうことですか。分かりました、水は足りてますか?」
太助の予定という言葉を一瞬疑問に思うも、彼の能力による予知だと直ぐに気付く所、伊達にこの家に来るようになって10年近く――もう少し長いだろうか?――も経っていないな、と文は思った。
「ヤカンで持ってきて頂けるとありがたいです……
あと、湯のみを六つ程……」
「分かりました。
紫さんが外界から持って来た、電気でお湯を沸かす……ポット、でしたか?があるから、沸かす必要は無いんですよね?」
「はい、よろしくお願いします……」
「任せて下さい、すぐ持って来ますね?」
そう言い残し、文が台所に向かうべく廊下に出て行くのを太助が見送っていると、廊下の反対側……縁側から声が掛かった。
「こんにちは、太助。体調は如何かしら?」
「遊びに来たよ、太助っ♪」
「お久しぶりです、太助様」
「いらっしゃいませ……レミリアさん、フランちゃん、咲夜ちゃん……」
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