人里の友人達。

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「さて、と、じっくり見る前に……」 阿求は写真を手元に閉まってそう呟き、部屋の奥にある襖を開く。そこには、1m程のシンプルな一本の槍が立てかけてあった。 それを手に取り…… 「……っせいっ!!」 天井に突き立てた。すると、 「うわぁーっ!?」 「あっぶねぇ、腕にかすったぞ!」 「くっそ、もう少しだったのに!」 「逃げ回れ!何としても逃げ切って、写真(おたから)を覗くんだ!!」 天井裏から、そんな声が聞こえて来る。 「更に……よい、しょっ!!」 次は、畳に。 「くっそぉ、こっちにも来たぞぉーっ!!」 「逃げろ、逃げろぉーっ!!」 壁に。 「ぐぁぁぁーっ!!」 「里人Aェェェーっ!! うぉっ、こっちにも!!」 阿求は次々と部屋のあちこちを槍で刺し、それぞれの場所からは里人達の悲鳴が飛び交う。 「……人里の人達も、大分変わりましたよねぇ…… ま、楽しくて良いですけど。」 しみじみと、悲鳴をBGMにお茶を飲みながら、文は呟いた。 「ていっ!」 「可愛い掛け声で、えげつない額コース来たぁっ!!」 「くそっ、だんだんと的中率が上がってやがる!!」 「もっと素早く、かつ静かに動くんだ!! 今のあっきゅん会長の勘は、博麗の巫女に匹敵するぞ!! っ、うわぁぁぁっ!!」 「里人Bぃぃぃっ!! 里人Bの犠牲を無駄にするな!!逃げ切って、何としても写真を覗くぞ!!」 『おぉぉぉぉぉっ!!!!』 「させませんっ!何としても、定例会まで写真は死守します!!」 「何も、定例会まで待てば良いでしょうに……」 声が聞こえた近辺に、達人もかくや、といった手際で槍を突き刺していく阿求と、その度に上がる叫び声を聞いて、文は、毎月よくやりますね……と半ば呆れた様子になる。 「ええい、仕方ない! 退却!退却ーっ!!」 「逃がしません! 食らいなさい、あっきゅんバスター!!」 『うぉわぁぁぁっ!!』 「逃げろ、逃げろぉぉぉっ!!」 「速く行けって、後ろが詰まる!!」 「逃がさないと、言った筈です!! もう一度、あっきゅんバスター!!」 「いや、逃がしましょうよ……」 文がボケではなくツッコミ役に回るという珍しい光景が、この部屋で繰り広げられていた。 ……と言うより、割と常識を知っている者がこのノリを見れば、嫌でもこうなるだろうとは思われるが。
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