人里の友人達。

4/11
前へ
/50ページ
次へ
「ふぅ……やっと、気配が消えましたね」 「頑張りますねぇ、阿求さん。毎度毎度、疲れませんか?」 槍の石突きを畳に付け、いい仕事したとばかりに一つ溜め息をつく阿求に、お茶を飲み終わって正座を崩し、足を伸ばして畳に手まで突いた姿勢の文が訊ねる。 「この程度、太助さんの写真を楽しめると思えば、筆を動かしているのと大して変わりませんよ?」 「……まぁ、分からなくはないですけど。」 文も、半ば趣味としてではあるが新聞を作っているので、趣味に関しては多少の手間が気にならないと言うことは良く分かる。 1m程とは言え、槍を振り回す事が筆を動かす事と同じようなもの、というのは理解出来ないが。 「(人里の人達だけじゃなくて、阿求さんも変わりましたよね……)」 太助の事を知るまでは……正確には、『くだんのくだん』が設立するまでは、筆や本以上に重い物は持った事がない、割と大人しめの文学少女、という表現が合うような少女だった……のだが。 何に影響されたのか、ファンクラブに参加している人里の人々(人里の住人の過半数)と阿求は、気付けばこんなノリになっていた。 こうなっていないのは、慧音や子供達、年寄りくらいのもの。……子供達は、影響を受けつつあるが。 「(まさか、おおっぴらには出さないものの、あの霧雨さんまではっちゃけるようになるとは……)」 霧雨さん、つまりは霧雨魔理沙の父、霧雨道具店の主である。 実の娘である魔理沙が魔法使いを志した時それを頑として許さず、また、魔理沙もその意志を曲げなかったため、愛想を尽かして勘当した厳しい父親、と言われている霧雨氏。 文が最近公開しないなら、と直接聞いた話では、実際の所、「魔法使いになって、万が一爪弾き者になったらかわいそう、しかし甘やかす訳にもいかない。」という考えと、娘に対してやや不器用なことが重なり、魔理沙との話し合いの流れで少し興奮していたのもあって、勘当、という事になったらしい。 霧雨氏は本当の所魔理沙を溺愛しており、古くからの友人達と夜な夜な集まっては、魔理沙がいかに可愛いか、と語り合っているらしい。 昔霧雨道具店で働いていて、勘当の件についても知っている森近霖之助が来て一緒に酒を飲む時も、酔ってくると毎回勘当した時の愚痴を呟きだすそうだ。(霖之助談) はっちゃけるようになったというより、正確には元々そういう所があったのだろう。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

75人が本棚に入れています
本棚に追加