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何?体が弱い妖怪なんていたのか、だって?
ふむ……まぁ、人間よりも更に低確率でなら弱い体を持って生まれる事もあるな。
だが、あいつはそうじゃない。件という種族としての問題と一つの幸運のおかげで、弱い体ではあるが生きていられるんだ。
そもそも外界においては、件という妖怪は牛から生まれ、予言をして数日もしない内に死んでしまう、頭は人、体は牛の姿の妖怪とされている。……ああ、あいつはそんな姿では無いから安心しろ。
何故こんなに短命かと言うと、理由は2つある。
1つは、妖怪が存在する為にかなり重要な事だ。それは、他の妖怪とは違って人間からの恐れも感謝も無しに生まれ、それを受ける前に妖怪としての体が保たなくなる事。
幻想郷の存在意義を考えれば分かるとは思うが、妖怪や神は人間の恐れや信仰から生まれ、それゆえに、それらが得られなくては存在し続けられない。
だが、件は感謝されるような事はしても、予言が実現する前……つまり、感謝される前に体が保たなくなり、死んでしまうんだ。
2つめは……まぁ1つめと関係あるが、妖怪にとっては、外界の空気は神々の微弱な神聖性が漂っているから弱めの毒のようなものでな。
他の妖怪は妖力でそれを防ぎ、体内に入っても微弱故にそれを中和する事が出来る。
だが、妖力の容量は人間から受けている恐れなどの量に比例する。
つまり、件には予言を知らせる為に必要な程度の量しか無い訳だな。
そして予言を終えた頃に妖力が無くなり、個人差はあるものの、大体その数日後に蓄積された毒に耐えきれなくなり……死に至る。
あいつの幸運は、幻想郷が結界によって隔離された後に生まれ……そして、毒が致死量に至る前に八雲 紫に幻想郷に案内された事だ。
幻想郷を囲う結界の中は、普段は神々から発される神聖性を妖怪には害が無いようにしている。だから、これ以上に悪化する事は無い。
しかし、妖怪というのは本来恐れから生まれるものでな。感謝を受けてもなかなか妖力は増えない。
なのであいつは体が弱いまま……中和も出来ないまま、という訳だ。
何とかしてやりたいとは思うが、こればかりは自分自身の妖力でしか対処出来ないからな。
だから、私はあいつの知らせがあった時は心の底から感謝するようにしている。あいつは優しい奴だからな……少しでも早く、自由に歩き回れるようにしてやりたいんだ。
本当は、世話をしてやれると良いんだがな……
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