傍に居たい

11/30
前へ
/466ページ
次へ
 蹲っている友也を引っ張り上げようと男が腕を伸ばした瞬間、後ろから飛んできた何かがすごい勢いで頬を掠めていき続いて何かが壊れるような音が耳に届く。 恐る恐る顔を上げればフェンスにテニスボールがめり込んでいて青ざめた表情で男は振り返る。 「……何してんだ?」 いつのまにか背後に仁が立っていて男はその表情を見てさらに顔を青くさせる。 友也は仁の姿を見付け少しだけホッとするが後ろに玲志がいるのが目に映り胸が締め付けられるように痛くなり苦しくて友也は俯き蹲る。 仁が何かを言っているがもう分からず自分の心臓の音がガンガンと頭に響く。 「……や………友也ッ……。」 「………リーダー……?」 目を開ければ仁の腕の中にいて抱き締められていた。何度も髪を撫でてくれる大きな手が暖かくて覗き込んでくる仁の目が優しくて友也は恐る恐る腕を伸ばし仁の服にしがみ付く。 「大丈夫か?」 「……平気………。」 そう言った瞬間、覗き込んでくる仁の目付きが変わった気がした。 「…………嘘です……ごめんなさい…。」 そう言えば仁は満足そうに「ん。」と頷いた。
/466ページ

最初のコメントを投稿しよう!

624人が本棚に入れています
本棚に追加